幸せかと問われたら

すぐ頷けるように生きていきたい

腹をくくる

気持ちの忙しい1週間だった。

つらい、苦しい思いはしたくないと思うのが人間の常である。

30年弱生きてきて色々なことがあったが、ひとつ乗り越えるとまたひとつ壁が出てくるような感じだ。

 

 

手術から1年が経過し、今のところ問題がないとのことで不妊治療のために他の病院へ。

初診だったので軽い気持ちで行ったのだが、それがまずかったのかもしれない。

自分ががん患者だということを棚に上げて忘れていたのである。

もっと心してから臨んでいれば大きなカウンターを喰らうこともなかったのかもしれない。

まあ、そんなこともないのかもしれないが。

 

 

とにかく、軽い気持ちで行った。

なんか検査をして、経過を見ながらたぶん薬を飲んで、それからどうなるのかな、と。

でも、先生から開口一番に出た言葉は違った。

「子宮体がんをやっているようであれば、最初から体外受精を薦めます。」

えっ?と思う間もないほどすぐに続けて

「今日は血液検査をします、培養士からの説明も受けてください」と。

 

 

半ば呆然としながら血を抜かれた。6本も抜かれた。

看護師さんから色々説明を受けたが、状況に気持ちが追いついていなかった。

結局その日は一日中具合が悪かった。

採血で貧血になったのかと思ったがたぶんまあ心の問題だったんだろう。

 

 

体外受精って体外受精

まさか自分が体外受精をするなんて思っていなかった。

不妊治療について色々調べてはいたが、自分で注射するのは嫌だなと思っていた。

それがまさかの一発でその段階に行ったのである、半ばパニックだ。

 

 

培養士さんに話を聞くとき、心は完全にまだどこかに行っていた。

他人事のように聞いていたのかもしれない。

体外受精をはじめるのであれば次の来院が1週間後と告げられた。

1ヶ月空けても問題ないのか?と聞いたのだが、

先生からすぐやったほうがいいと薦めがあったとのこと。

完全にノックアウトである。

 

 

気持ちが整理できないまま、最低な体調の中色んなことを考えた。

考えていた、というよりは、不安が身体中を駆け巡っていた、というほうが正しいか。

怖い。怖い。お金は大丈夫か。仕事大丈夫か。怖い。怖い。

その繰り返しである。

ゴミのようなメンタルの自分には、1日ではとても受け止めきれなかった。

 

 

体調も落ち着き少し時間が経つとだんだんと冷静になれた。

たくさんの患者さんを診てきたであろう先生が即断する状況なのである。

四の五の言っている場合じゃねえのだ。

私は旦那の子どもが欲しい。ならば、できることは1つしかない。

 

 

当たり前であるが全部をひとりで抱えきれるわけもない。

旦那に伝えた。あまりに急なスケジュールに驚いてはいたが、了承してくれた。

職場にも伝えた。了承してくれた。

親にも伝えられた。了承は得なくてもいいのだが、尊重はしてくれた気がする。

これで最低限はクリアした。

がんのときもそうだったが、人に話すとなんだか冷静になるのは不思議なものだ。

心配をかけまいとして、自分は大丈夫という雰囲気を出すのがうまいのかもしれない。

 

 

色々と情報を集めることにした。

子宮体がんになった人はやはり基本的に体外受精をしているらしい。

体外受精で生まれる子どもは今や16人に1人になっているという。

そんなにたくさんのお母さんが自己注射をしているんだ、という驚きもあった。

自分だけがこうなんじゃない。腹をくくるには十分だった。

 

 

怖くないわけじゃない。怖い。逃げ出したい気持ちもある。

でも、今逃げたら後悔するだけだ。

状況は日に日に悪くなるだろう。いつ手遅れになるのかわからない。

できることがあるんだったら、しっかりやってみたい。

できることがなくなってしまうほうが、ずっとつらい。

怖い、痛いのも、できることがなくなってしまうより、全然ましだ。

結果がどうなっても、最善を尽くしたと思える自分でいたい。

 

 

じゃないと、後悔する。

私は、私と旦那の子どもが欲しい。

 

 

色々調べた中で、いい言葉に出会った。

よその子はよその子であって、私と旦那の子どもではない。

だから、羨ましいとかはない。ということだ。

確かにそうなのだ。ただ子どもが欲しいんじゃない。

私と旦那の子どもだから欲しいんだ。

 

 

だから、がんばれる気がする。

心が折れそうになっても。折れてしまっても。

泣き止んだら立ち直れる自分でいてほしい。

 

 

明日は病院だ。

余計な事を考えて胸がざわざわしてしまうのは、もはやしょうがない。

でも、できることがあるうちはやってみよう。

泣いてもいいから、その度に一生分のポジティブを呼び覚まそう。

 

 

女に二言はない。腹はもうくくったのだ。